「記憶の旗を振り続けて」 柏陵中学校 3年 兒玉 光由 さん
記憶の旗を振り続けて
柏陵中学校 3年 兒玉 光由
皆さんは明日、もし自分の家、故郷が見知らぬ人に奪われたらどんな思いをするでしょう?ありえない理不尽さ。これは私の曾祖母が経験した現実です。
「ああ、私は今、故郷の地を踏みしめているのだと実感しました」これは私の曾祖母が墓参後に残した手紙の一部です。
私の曾祖母は色丹島で学校の先生をやっていました。ですが、1945年その故郷は突然、ソ連兵により奪われてしまいました。そして北方領土の島民の方々も北海道へ追い出されてしまったのです。私の曾祖母もその一人でした。
私は根室で生まれ育ちました。だからこそ、曾祖母のような元島民の方々の深い苦しみや無念を、誰よりも近くで感じてきました。
私も初めは北方領土について何も知りませんでした。なので母親や祖母、元島民の方々の話を聞いたり、ネットでも調べてみました。北方領土について知っている方は「返してほしい」という意見でした。しかし、ネットの海に溢れていたのは、「昔からロシアの領土じゃないの?」という悪気はないのという冷酷な言葉でした。信じられませんでした。かつてそこにあった温かい生活も、元島民の方々の涙も、すべてを無かったことにするような言葉の暴力に、私は激しい怒りと、血の気が引くような恐怖を覚えました。一歩根室の外へ出ると、そこに広がっているのは「圧倒的な無関心」という冷たい現実です。
皆さんに、あえて厳しく問いかけます。私たちは今、この瞬間も、我が国の一部が「勝手に占領されている」という異常な現実に、どれだけ危機感を持っているでしょうか。「北方領土は日本の領土だ」と、ただ教科書の文字をなぞるように覚えているだけではないでしょうか。私は、映画「ジョバンニの島」を観ました。終戦後、島に進駐してきたソ連軍によって故郷を奪われた兄弟の物語です。劇中では、過酷な状況下でも、島の子どもたちとロシア人の少女が心を通わせる姿が描かれます。私は思いました。奪ったのは、ロシアの「国家」であって、そこに住む「人々」に罪はないはずだと。しかし、現実はどうでしょうか。映画のような美しい心の交流など、今の冷え切った外交の前には、ただの幻想に過ぎないのではないか。そのもどかしさが、私の心の奥底を刺激しました。
曾祖母は亡くなるまで「いつかまた、あの島に戻れる日は来ないのだろうか」と、叶わぬ思いを抱き続けました。ですが、その願いは叶わないまま、亡くなりました。
元島民の方々の故郷への帰還に、制限がある現状はおかしい。その怒りと理不尽さを、今度は私たち若者が引き継ぎ、声を拳げ続ける番です。SNSでの発信でも、身近な人との対話でもいい。私たちが語り継ぐことで風化させないことが大切です。
曾祖母の無念を晴らし、未来を変えるのは過去を生きた人々ではありません。今を生きる、私たち若者の強い意志です。私たちが「関係ない」と目を背けている間にも、島の歴史を知る元島民の方々の平均年齢は、すでに八十代後半を超えています。もう、私たちには時間が残されていないのです。
皆さん、無関心という殻を破り、共に声を挙げましょう。私はこの根室の地から、世界へ、そして未来へ、曾祖母の記憶を語り継ぐ旗を振り続けます。私は、絶対に諦めません。
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更新日:2026年09月03日
















